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第30段 正しい価格設定とは
 (
テーマ 優れた商品をつくる) 平成14年8月19日

●3つの価格設定のパターンを考える

 価格設定をするときに、必ずしなければいけないのは、原価計算だ。くり返しになるが、「仕入」の直接原価だけではなく、間接原価の「経費」を含めて考えなければならない。経費は人件費、販売費、広告費、設備費、水道光熱費、旅費交通費などが含まれる。ただし、これだけでは足りない。順を追って、その説明をしていこう。

  A              B             C
予想売上 100→80   予想売上 100      予想売上 120
――――――      ――――――     ――――――
予想仕入 50   →  予想仕入 50  →  予想仕入 50
――――――      予想経費 20      予想経費 20
予想利益 50      ――――――      上乗せ利益20
               予想利益 30      ――――――
                             予想利益 30

 上の図の中で、多くの企業が行うのがAだ。「仕入」の直接原価しか考えないから、「予想売上」すなわち価格を100円にする。しかし、100円にすれば、50円は儲かると思うから、価格を80円にしてしまう。経費を考えれば、予想利益は30円なのに、価格を下げたら、ビジネスとして成り立たなくなる。

●リスクファクターに対応して、利益の上乗せをする

 「仕入」に「経費」を含めて考えたのがBである。予想どおりにいけば、価格を100円と設定しても利益は出る計算になるが、リスクファクター(変動要因)があるから、実際は難しい。リスクファクターの基本は、「売上が下がる」「仕入が上がる」「経費が上がる」であり、次のようなことが起こりがちだ。

 1.売上が予想したよりも少なかった
 2.予想したスタッフ数では足りず、増員した
 3.仕入先が潰れ、新たな仕入先を探したので、仕入が高くなった
 4.広告費が予想以上にかかった

 これらのリスクファクターに備えて、「上乗せ利益」(リスクファクターを緻密にして、数字を出す)をプラスして価格を設定しなければ、利益は出なくなる。Bにこれを加えたのが、Cであり、上乗せ利益が加わった分、価格は120円となる。

 価格を120円にすれば、上乗せ利益分の20円はかかっても、利益の30円は確保できる。たとえ20円を上回って30円になっても、0までいかないから、とりあえず成り立つ。

 大雑把に計算したAの価格は80円であり、緻密に詰めたCは120円。その差は40円にもなる。この差が、会社の利益が出せるかどうかにつながる。つまり、売上、直接原価(仕入)だけではなく、経費がいくらかかるか。それに対し、利益はいくらとれるか。さらに「リスクファクター」は、どのくらいあり、それに対応して、利益の上乗せをしなければ、利益は出せない。


 文責 山田 咲道 公認会計士・税理士
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