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第658段 成功も失敗も財産になる
 
シリーズ 取締役会とは) 令和2年10月19日

●失敗もあれば成功もある

 付加価値をつけることが大事だということは、どんな業種業態にもいえることだ。それをできるだけ若いうちに後継者に伝えていくのが望ましい。青年会議所で学んだり、MBAを取得したりする必要などなく、取締役会で議論できればリアルな経営で教えることができる。自社で現実に体験してもらうのが一番いい。

 生きた事例として、「思いきって失敗してみろ」というのも一つの手だろう。「成功したら百億、その反面、20〜30億の資金を溶かしてしまう可能性もある」といった場面など、上場会社ではよくあることだ。失敗もあれば成功もあるから、仕方ない。ずっと成功はできない。失敗も重ねていく。失敗と成功の中で学んでいき、「こうじゃなければいけない」というものを自ら掴み取っていく。成功オンリーの経営者ではダメなのだ。

●失敗の要因も共有する

 失敗したにしても、どういう判断をしたか、情に流されなかったか、社長や会長の顔を立てたなどの情実的な理由があったか、世の中が悪くなったか、トランプ大統領の言動がおかしかったか、状況を読み違えたかなど、いろいろな要因が考えられる。
 どう判断をして、その結果どうなったかを役員会で共有できるのは極めて重要なことである。それが財産になっていく。経営的な感覚というものは難しく、言葉で簡単に伝えられても身にならない。

 例えば、単価が低くて拉致のあかない客との関係を清算するかどうか。営業部長単独ではなく役員会で議論する。一対一だと、やりたい、やりたくないで終わるからだ。
 実際、営業部長がつなぎのためにも残した方がいいという昔からの採算割れのお客さんがいた。取締役会で散々議論して、単価を倍にしてもらうことにした。営業部長にはその交渉はできないというので、私が出かけて行って引導を渡した。その結果、単価は倍にしてもらえたが、仕事が減って売り上げが1/3になった。売上減で営業部長は不満かもしれないが、もともと成り立っていなかったのだから、これでいい。単価が倍になれば絶対に儲かるからだ。役員会が教育の場となり、いずれこういう判断ができるようになる。


 文責 山田 咲道 公認会計士・税理士
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