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第795段 専業起業への移行基準
 (
テーマ 個人で起業する) 令和8年7月6日

粗利50万円が個人開業の収益ライン

 副業から専業への移行には、想像以上に高いハードルがある。個人開業の目安として、自宅であれば月50万円、賃貸であれば月100万円の売上総利益(粗利)がなければ事業として成立しない。売上ではなく粗利の話であり、正社員を雇用する余裕はない水準だ。
 知り合いのフリーライターは在宅で月50万円を稼いでいたものの、将来を考えると100万円ほどは必要だった。単純に原稿を書くだけでは到底届かず、編集、進行管理、取材手配まで担う必要がある。情報収集や人脈づくりも含め、飲み会なども仕事の一環となる。

 AIの進化によって、ChatGPTのようなツールを活用すれば作業量をこなせるかもしれないが、生成された内容に誤情報も多く、厳密なチェックが不可欠で、手間は変わらない。
 一人の力だけで粗利100万円を安定して稼ぎ続けるには限界がある。すべて自分でこなせば売上に直結するが、事業が拡大するにつれて社員や外注も必要となり、利益はさらに圧迫される。事務所を構えた場合には、さらなる経済的負担がかかる。

分散した顧客基盤で弾力性ある経営を

 私が開業した当初、小伝馬町に事務所を構え、月に100万円程度の売上を確保していた。しかし、生活費だけで数十万円が消え、マンションのローンや事務所の賃料、税理士会・会計士協会の会費、日経新聞購読料など、継続的な固定費が重くのしかかっていた。正社員ではなくパートを雇用して回していたが、収支に余裕はまったくなかった。さらに、主要な取引先が倒産した場合には、同じ水準で経営を維持することは難しくなる。

 エース会計事務所が現在も体制を維持できているのは、私自身がほぼ24時間体制で働いていることに加え、売上が特定の顧客に偏っていないことが大きい。最大の顧客でも売上の20%程度に抑え、その他は5〜10%前後に分散しているため、ひとつの顧客を失っても致命傷にはならない。楽な道を求めてつい大口顧客に依存しがちだが、リスクを踏まえたポリシーを持ち、顧客の絞り込みや契約の見直し、整理すら行う覚悟が求められる。
 日々変化する経済環境で安定的な利益を生むには、万が一の損失に耐えられる弾力性のある経営が必須だ。そして最後に問われるのは、経営者本人の実力、人柄、根性である。


 文責 山田 咲道 公認会計士・税理士

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