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第724段 老後資金2,000万円対策は必要か
 (
シリーズ 個人の財産形成) 令和5年7月17日

「老後2,000万円問題」とは

 金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」による「老後30年間で約2,000万円が不足する」という試算は公式発表ではなかったものの、新聞などで「老後2,000万円問題」として大々的に報じられ、マスコミは大騒ぎになった。多くの国民は、国民年金を受け取るタイミングの65歳のときに一世帯あたりで2,000万円を持っていない。
 当時、副総理兼金融担当大臣だった麻生太郎氏は、この話を否定しながらも、必要な金額については言及せず、話題は消滅してしまった。一定の目安も示されないまま、うやむやにされ、今日に至っているが、2,000万円という金額は人々の記憶に刻まれている。

 平均寿命を80歳後半ぐらいとすると、定年退職した65歳からの余命20年間に、毎月10万円に満たない国民年金をもらっても、家賃や生活費、医療費などを考えると十分な額とはいえない。
 年金だけでは暮らしていけず、毎年100万円ほど取り崩して生活していくことになるだろう。いや、1年に100万円、20年間で2,000万円では足りないかもしれない。

年金だけで医療費や家賃を賄えるか

 高齢者の医療費は高額で、薬代だけでも高い。一定以上の所得のある75歳以上の高齢者の医療費の窓口負担割合は令和4年(2022年)10月から、1割ではなく2割になっているが、現役並み所得者は3割負担だ。高血圧、糖尿病、花粉症などの病気を根本的に治さずに慢性化させることで、医療はますます多くの患者を生む仕組みになっている。
 家賃が10万円以上かかる地域もある。交通の便がいい大都市近郊なら家賃だけですむが、田舎では車が必要不可欠となる。駐車場代や維持費など、車にかかる費用は高額だ。

 老後資金が現在の年金額で足りないなら、増額が必要になる。政府は投資収益、あるいは税金の徴収額を増やすしかないが、国債の運用成績は低く、年金が増えることはない。
 客観的に考えていくと、65歳になるまでに最低でも2,000万円の老後資金が必要になるということだ。政府が「2,000万円問題」に対して真摯に取り組んでいない以上、個人それぞれ自助努力で対処しなくてはいけない。



 文責 山田 咲道 公認会計士・税理士
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