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第745段 与信管理の重要性
 (
テーマ 会計を活用して節税する) 令和6年6月3日

仕入れ先と売り先のリスク

 与信とは、取引先に対して信用を与えることだ。企業間の商取引では、商品やサービスを先に提供し、後日代金を請求するケースが多く、与信があるからこそ取引が成り立つ。仕入れ先の上場会社に対し、買い手側がいくら「お客様は神様だ」と主張しても、自社の与信が立たないと取引をストップされる。商品やサービスの提供側は貸し倒れリスクを直接負うので、大手ほど与信管理がしっかりしていて、危ない取引を行わないからだ。間に商社を入れざるを得なくなると、仕入れの値段が1.2倍、1.3倍と跳ね上がる。仮に仕入れられたとしても競争力を失い、信用力が高いライバルに勝てない。

 一方、売り先に信用がないケースで恐れるべきは、アフターフォロー、製造物責任だ。住宅のような不動産は民法上の契約不適合責任(瑕疵担保責任)を負う一方、「製造・加工された動産」は製造者が賠償の責任を負う製造物責任法、略してPL法が適用される。例えば、窓ガラスや扉など工場生産された内外装材や厨房、照明器具などの設備といった住宅部品にはPL法が適用される。引き渡したときから10年が経過したら製造物責任は消滅する。しかし、責任を負うべき業者等が倒産した場合、瑕疵があっても直してもらえない。信用リスクの高い取引先を見極め、潜在的な損失を最小限に抑えなければならない。

取引先を正しく評価する

 上場企業は新規で取引する相手先企業を、帝国データバンクや東京商工リサーチのようなノウハウがある専門の信用調査会社で必ず与信調査する。エース会計事務所と顧問契約を結んでくれている大企業も与信調査をしているはずだ。取引先の倒産リスクの調査もあるが、実際に取引を継続するかどうかを判断するための調査もある。取引先の与信を定期的に確認することで、これまで通り手形を認めていいのかといった取引条件を見直し、検討する。

 与信情報は金融機関の融資に限らず、売り先、仕入れ先双方に影響する大事なものだ。取引先を正しく評価し、保全しないと、製品やサービスの質が落ちていく。取引先が減って、事業が回らなくなってしまうかもしれない。信用ある取引先と継続的な取引を行えるよい関係を築くために、自社の信用が大切だ。


 文責 山田 咲道 公認会計士・税理士
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