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第44段 取締役と株主
 (
テーマ 大局から経営を考える) 平成14年11月25日

●所有と経営の分離とは

 会社は所有と経営の分離がされている組織であり、所有しているのは株主、経営しているのは取締役である経営者だ。株主がお金を出して、株主総会で株式会社の場合は3名以上、有限の場合は1名以上の経営者である取締役を選任し、取締役会で、最高責任者である代表取締役社長を選ぶ。

 会社形態では、このように段階的に分かれているから、会社を大きくして株式を公開すれば、株式市場で資本を集めたり、売ったりすることもできる。これが法人と個人との違いであり、税金面でも法人のほうが優遇されている。

 なぜそのような形態をとっているかというと、投資家はお金を持っているだけであって、必ずしも優秀な経営者ではない。投資して利益を得ることが目的だから、会社をより発展させるには、有能な経営者に会社経営を任せたほうがいいわけだ。

 資本金が大きく、従業員1万人、2万人を抱えている会社は、パブリックな存在である。従業員のほかに債権者(銀行、仕入先)、得意先や顧客といった利害関係者が多数いて、株主や経営者のためだけに存在しない。長期的な利益成長をして、社会的に貢献するためには、所有と経営を分ける必要がある。それにより、株式市場からうまく資金を調達したり、経営者として優秀な人を誘い入れることができる。

●中小企業は所有と経営を分離していないが…

 事業規模が小さい中小企業の場合、所有と経営を分離する必要がなく、株主=取締役=代表取締役なのが一般的だ。しかし、社長が年をとって引退したいと考えたときには、株主となって、だれかに会社経営を任せることもできる。利益を上げることができなければ解任も可能だ。あるいは儲かっている会社ならば、会社自体を売るという方法もある。

 もちろん、能力のある息子や娘がいれば、会社を継がせるのもいいだろう。しかし、器を考えなければいけない。それを無視して継がせようとしたら、会社をつぶすだけだ。それに加えて、何代も続いてきた企業を継ぐのならば話は別だが、一代で築いた会社ならば、社長自身が親の事業を継いでいないのに、子どもに継ぐことを強制させるのはエゴに等しい。息子や娘の意志、そして器を客観的に判断し、向かなければなるべく現金を分け与えることが望ましい。


 文責 山田 咲道 公認会計士・税理士
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