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第469段 「遠きをはかる者は富む」
 (
シリーズ 遠きをはかる) 平成24年10月1日

将来に対する計画的行動が大切

 今回は、二宮尊徳翁の「遠きをはかる者は富む」という、非常に価値のあるテーマを取り上げたい。

「遠い先のことを考える者は、百年のちのために松・杉の苗でも植える。(略)だから富有でいられる。ところが目先のことばかり考える者は、春植えて秋みのるものさえ、まわりくどいといって植えないで、ただ眼前の利益に迷って、まかずにとり、植えずに刈るようなことばかりに目をつける。だから、貧窮するのだ」という翁のことばが、『訳注 二宮翁夜話(下)』(福住正兄原著:佐々井典比古訳注)に紹介されている。

「遠きをはかる人は富む」、逆に「近場のことばかり考えている人は貧乏になる」とは、具体的にどういうことなのか。

 日本はいま自由競争社会で、誰しもお金を稼ぎたいと思っている。お金を稼ぐためには、生きていくうえで必要な短期的な行動だけではなく、遠い将来に対する計画的行動が大切なのだが、年齢が進めば進むほど義務というものが消滅し、長期的に有益なことをしなくなるのにお気づきだろうか。

 たとえば、新聞を読まず、テレビしか見ない、休みの日は家でゴロゴロしている、という怠惰な生活スタイルになっていく。人はある程度お金を稼いで、それなりにお給料をもらい、そこそこ幸せな人生を送っていると、成長する必然性も意欲もなくなってしまうものなのだ。

経営者は常に成長していかなくてはいけない

 一方、若い人は、いい大学に入る、いい職業につくといった、3年くらい先の目標が勝手に設定されているため、将来に向かって日常的に勉強していることになる。仕事も含めた人生設計を長期的に考え、がんばれるのが学生時代だ。

 ところが、働き始めて社会的ポジションがアップし、給料も上がって会社も順調という状況になると、がんばる部分が次第に欠落し、成長がその段階で止まってしまう。

 雇用されている身分のサラリーマンなら、給料の範囲内で一生懸命仕事をすればいい。だが、社長の成長がストップすると、会社の成長がストップすることになり、倒産することになりかねない。社長イコール企業である。経営者は常に成長していかなくてはいけないということを命題として、日々行動していく必要がある。それができないなら、経営者失格である。


 文責 山田 咲道 公認会計士・税理士
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