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第607段 人が定着しないブラック企業
 
シリーズ ブラック問題を考える) 平成30年8月6日

●求人できなくなる悪循環

 ブラック企業はどう衰退していくのか。求人倍率1倍というご時世のいま、まず人が集まらなくなっていく。求人票も受け付けられず、新卒採用ができなくなる。就職先を探すにあたって、ブラック企業かどうかをインターネットで検索して調べる時代だから、会社案内にきれいごとを並べ立てても、実態を見抜かれてしまう。そうすると、いい人材がとれなくなり、リクルート面で破綻をきたす。

 求人がにっちもさっちもいかなくなり、職場環境も悪いと、人が辞めて定着しない。さらに、「人がとれない、職場環境が悪い、人が定着しない」という悪循環に陥っていく。
 ブラック企業の問題を解消しようとする労働基準監督署が、長時間労働による法令違反取り締まりを行う様子などが報じられる機会も増えた。最近は病院なども是正勧告を受けている。経営者はこの社会問題を抜本的に理解する必要がある。

●是正勧告を受けると会社が成り立たない

 ブラックな状態を前提に企業の根幹が組み立てられていると、いざ労働基準監督署がやってきて、「残業は一切ダメ」となると、会社が立ちいかなくなる。牛丼チェーン店「すき家」のケースがまさにそれだ。深夜帯の営業を従業員1人に任せるなど労働環境が過酷だったすき家は、ブラック企業のマイナスイメージが強くなり、人材確保が困難になった。
 労働基準監督署の是正勧告を受けて、2014年には国内約2000店舗の半数以上が深夜営業休止に追い込まれた。設備が稼働しなくなれば、経営自体が苦しくなる。ブラックな状態で労働者を使うことは企業リスクそのものなのだ。その後、労働環境の改善に取り組んで人手不足を解消し、いまでは休止店舗の約9割が深夜営業を再開したという。

 企業を経営するにあたって残業は絶対に必要だが、ブラックな状態では人が集まらない。是正するよう指摘を受ければ、ストラクチャーが崩れる。ブラック企業と認定されてしまったら、はっきりいって未来はない。
 もともと、従業員を幸せにできなければ、企業としての社会的存在意義がない。ブラック企業にならない状態を前提に、事業を組み立てていくことが非常に重要だ。



 文責 山田 咲道 公認会計士・税理士
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