■第635段　真意を正確に伝えるために
　（シリーズ　不祥事の危機管理）　令和元年１０月２１日

●話を面白く切り取るのがマスコミの手

　記者会見を求められたら開催するしかない。気をつけなくてはならないのは、マスコミの特性として、発言の一部分だけを切り取られることだ。政治家で言えば、例えば麻生太郎財務相が記者会見で「そんなアホなことをいう奴はいないから違うよ」と発言したとする。それが「アホだと言われた」「誰々をアホ呼ばわりした」などと面白おかしく改ざんされてしまう。まともな範囲を超え、判断を齟齬するレベルまで内容がずれることもある。

　オウム真理教が世間を騒がせていた当時、広報部長だった上祐史浩さんは、口八丁で巧みに詭弁を弄することから「ああいえば、上祐」と揶揄された。上祐さんは抗弁しているつもりでも、マスコミはネタにしやすい。発言は一回世に出ると訂正できないし、訂正記事が出ても誰も読まない。最初から正確な内容で記事にしてもらうことを心がけるべきだ。

●Ａ４サイズの配布資料を１枚用意する

　社長が口下手の場合、記者会見では謝るだけでいい。しかし、トップが出席しないことには収まらない。日大も、理事長がいつまでも出てこないから収まらなかった。説明は弁の立つ人がやればよくても、謝るのはトップの仕事だ。
　早めに対応すれば社長が出なくてもすむケースもあるが、事が大きくなると、「なぜ社長が来ないんだ」と責められる。そのスピード感の見極めが非常に重要なところだ。社長が1回謝ればことは収まるが、進退という次の話に発展することも考慮しないといけない。もちろん辞める必要がないケースも多々ある。他の人にはできない後処理を、責任をもってすべきケースもあるからだ。

　記者会見や記者の取材時には、Ａ４の説明書面1枚を配るのが鉄則だ。話し言葉だけでは趣旨が伝わりにくいので、配布資料を補足説明し、記事にしてもらうスタイルが望ましい。
　質疑応答の時間は当然設けなくてはならない。２０１１年の東日本大震災のとき、官房長官だった枝野幸男氏の落ち着いた語り口は説得力にあふれていた。彼は弁護士だから、現状把握と情報整理力に優れ、記者の質問に自分の言葉で臨機応変かつ丁寧に答えていた。記者会見では、あのレベルに準ずるくらいの人に対応してもらうことを目指すべきだろう。

　文責　山田　咲道　公認会計士・税理士
　中央区の税理士　エース会計事務所　会社設立できる公認会計士　東京都

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