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第750段 役員退職金支給のメリット
 (
テーマ 会計を活用して節税する) 令和6年8月19日

退職金は税金が安い

 会社が黒字のケースで社長の年収を600万円と低めに設定した場合、会社に貯めておいて退職金でもらえばいい。役員退職金(役員退職慰労金)は規定がなくても、株主総会で決議すれば支給できるので、オーナーカンパニーなら何の問題もない。退職金は退職所得控除に加えて、税率は所得税率の2分の1と異常に安いので、月の給与を抑えて、退職金でドカーンとたくさんもらうのがオススメだ。役員在任20年ほどの経営者の退職金が5,000万円の場合、所得税、住民税込み572万円なので、税率は12%だ。

 税引後当期利益5,000万円を作るには、0.7で割り戻して7,000万円、利益の30%の法人税を持っていかれてしまう。それをストックして退職金としてもらえば12%の税金で済む。例えば、株式投資で生じる配当金や譲渡(売却)益には、20%(2037年12月末までは合計20.315%)の税金がかかることを考えれば、12%程度の税負担がいかに魅力的かわかる。
退職金は法人税法上、過大と見なされない適正な金額であれば、全額が損金算入できるので節税にもなり、さらに会社が社会保険料を負担する必要がないのが大きなメリットだ。

退職金課税の見直し

 国税庁は退職金を「長年の勤労に対する報償的給与として一時に支払われるものである」と定義しているため、他の所得より税負担が軽くなるよう配慮されている。だが、2023年6月に政府が発表した骨太の方針に「退職金課税の見直し」が盛り込まれた。「勤続年数20年超への優遇措置を見直す」もので、退職金課税の強化につながるのではと議論されている。2024年度税制改正では実施せず、結論は先送りされた。

 消費税のインボイス(適格請求書)制度が実際に始まってから、その影響の大きさに気づいて見直しの廃止を求める運動が広がっている。退職金の増税は、老後2,000万円問題に直結する根深い問題だ。退職金は、退職所得控除に加えて、税率は所得税の2分の1と確かに安いが、増税したら貧乏老人が増える一方だ。その税金を上げることは、年寄りから老後の資金をかすめとることにほかならない。



 文責 山田 咲道 公認会計士・税理士

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